今回は、みんなの日本語24課に出てくる「てもらいます」「てくれます」の違いと、その違いをどうやって練習に反映させるかを考えてみます。
教え方の手引きにある説明
「てくれます」については、みんなの日本語の『教え方の手引き』に、こんな説明があります。
ほかの人が話し手のためにした親切な行為をその人を主語にして聞き手に伝えるときに使う。
(『みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き』より引用)
それはそうなんですけど、どんなときに「その人」を主語にするのかがわかりません……。
『翻訳・文法解説 インドネシア語版』にもこの説明が書いてあります。
大切なのは、この続き。
「〜てもらいます」とほとんど同じ意味で使うこともあるが、「〜てくれます」のほうが相手が自分から進んで恩恵を与える行為をしたというニュアンスが含まれる。
(『みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き』より引用)
この説明も『翻訳・文法解説 インドネシア語版』に入れるべきだと思うんですが、残念ながら書いてありません。
授業への反映は?
「てもらいます」と「てくれます」の違いを授業で説明するときには、
お願いした→「てもらいます」
お願いしていない→「てくれます」
……でいいんじゃないかなあ、と思います。
個人的には、頼んだら「てもらう」一択です。頼んでない場合は「てくれる」。
頼んでないのに「てもらう」を使うこともないし、逆もまたしかりです。
教え方の手引きで、「てもらいます」の導入では、お願いするという件が含まれているので、そこにはものすごく助けられました。
練習への反映には、ひと工夫必要ですね。みんなの日本語の練習だと、状況設定がなく、単純な変換練習で終わってしまうおそれがあります。
追加練習に『まるごと』
追加として、『まるごと』という教科書の練習が使えそうです。
たとえば、『まるごと 初中級A2/B1』のトピック4「訪問」には、こんな練習があります。
まず、会話を聞きます。下の「A」はアニスさんというインドネシア人、「S」は坂本さんという日本人です。
A: 坂本さん、ジャカルタにはもう慣れましたか。
S: いやあ、まだあまり。毎日自分の家と会社だけだから。
A:あのう、よかったら今度の土曜日、家に遊びに来ませんか。
S:え、アニスさんの家に? 本当ですか。
(以下略)(『まるごと 初中級A2/B1』より引用)
それから、↓のように、( )内の動詞の形を変えます。
アニスさんはわたしを家に(よびました→よんでくれました)。
(『まるごと 初中級A2/B1』より引用)
先ほどの会話では、アニスさんが自発的に坂本さんを自宅に招待していますので、「よんでくれました」になるわけですね。
もうひとつ、見てみましょう。
S:アニスさん、インドネシア語で、ありがとうはTerima kasihですか。
A:はい、そうですよ。坂本さん、上手ですね。
S:ふふ。じゃあ、どういたしましては?
A:Sama-samaです。
(以下略)坂本さん:アニスさんにインドネシア語を( )。
(『まるごと 初中級A2/B1』より引用)
こちらの会話では、坂本さんがアニスさんに質問しているので、( )に入るのは、「教えてもらいました」ですね。
いずれの会話でも、頼んでいなかったら「てくれる」、頼んだら「てもらう」を使うシチュエーションが明示されています。
未習語彙が一部ありますが、そこだけカバーすればじゅうぶん練習に使えると思います。
ちなみに、『まるごと 初中級A2/B1』トピック6には、さらに「てあげます」もまじえた練習が。ここで「てくれます」「てもらいます」の復習もできるようになっています。
『みんなの日本語』も、『まるごと』も、うまく両方使えるようになりたいものです。
まとめ
今回は、みんなの日本語24課に出てくる「てもらいます」「てくれます」の違いと、その違いをどうやって練習に反映させるかを考えてみました。
違いは下記の通り。
頼んだ→「てもらいます」
頼んでいない→「てくれます」
練習の際には、「頼んだ」か「頼んでいない」かがちゃんと分かるような状況設定をするとよさそうですね。
ご参考になれば幸いです!